ICC国際交流委員会の大学留学プログラム
大学留学体験談
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■大学留学体験談〜イギリス〜
環境適応能力を身に付けることこそ、充実した留学生活を送るキーポイント
[予備コース編]
砂田 基(すなだ もとい)さん
1981年生まれ。東京都出身。日本で大検合格後、2002年7月よりLiverpool John Moores Universityのファンデーションコースへ入学。2003年9月より同大学学部へ進学し栄養学を専攻。
留学地・リヴァプールについて
 物価は日本と比べて、高いものもあれば安いものもあります。高いもの…電化製品、ファーストフードや携帯電話、同じくらいのもの…CDや本、安いもの…野菜です。イギリスの携帯電話は日本の製品と比べるとおもちゃみたいです。最近やっとカラーの携帯電話が発売されました。治安については、僕の友達がトラブルに巻き込まれた、という話は一度も聞きませんでした。それでも、夜中は街に酔っ払いがたくさんいますので(特に金曜日)、もし夜出かけるなら気をつけた方が良いでしょう。ロンドンやマンチェスターに比べると治安は良い方だと思いますが、犯罪が全くないというわけではないので、留学に慣れてきても気を緩めない方が良いと思います。ちなみに僕は警察官と強盗が追いかけっこをしているのを2回街で見ました。

ところでリヴァプールには中国人がたくさん住んでいます。ですので街でもよく中国人を見かけますが、日本人はめったに見ません。「留学するのだったら、あまり日本人(観光客)のいないところに行きたい」という人にはお勧めかもしれません。
授業の核となるのはコースワーク
 授業のスタイルは先生によってそれぞれ違います。宿題を出す先生もいれば、まったく出さない先生もいます。授業中、生徒にディスカッションを頻繁に行わせる先生もいれば、ただプリントを渡して問題を解かせて終わり、という先生もいます。尚、成績の対象となるのは試験とコースワークだけです。出席率・宿題などは成績をつけるときの対象ではありません。極端な話ですが、授業に全く出なくても試験とコースワークで良い点が取れればOKということです。現実にそういう生徒も結構いましたが…。

このコースワークにはいろいろなものがあります。ちなみに1学期は9個のコースワークが与えられていました。

1. 自分の興味のあるトピック(政治・環境問題・スポーツなど)に関する1500字のレポート
2. 1のコースワークを要約してテープに吹き込む。15分
3. 種類の違う3種類のお店の来客数を男・女・子供別に集計。集まったデータを元に3種類のグラフの作成。
4. 自分の就職したい会社宛のCVCurriculum Vitae)の作成。
5. 旅行者向けのLiverpool Tour Guideの作成。400字以内。
6. 自分の国の文化を紹介するプレゼンテーション。3〜5分以内。
7. 自分自身を紹介するWeb Page作成。
8. 「中等教育と高等教育の違いと類似点、そして高等教育に対応するためのアドバイス」についてのエッセイ。400字以内。
9. 与えられた9つのトピック(車・電球・ペニシリン・DNAなど)の中から1つ選び、そのトピックの背景知識、発見・開発された経緯、社会に与えた影響などを含んだエッセイ。1,000字以内。

言うまでもなく、コースワークは期限が設定されていて、1日でも過ぎたら受け取ってくれません。またイギリスの大学はPlagiarism(盗作)にとても厳しく、もし発見されたらどんなに良くできたコースワークでも0点になります。例えばLiverpool Tour Guideを作成したとき、先生は「リヴァプールに関するホームページや本は殆ど読んだので、そこから文を盗んだらすぐ分かります」と言っていました。それでもPlagiarismをやった生徒は何人かいたようですが…。

大学には試験がなくコースワークだけで成績が計算されるModuleもありますが、ほとんどのModuleは試験があります。試験の長さは基本的に2時間ですが、Moduleによっては3時間の場合もあります。1・2学期で7回しか試験を受けていないので一概に言うのは難しいのですが、基本的に選択問題はあまりなく、記述式の問題が主流だと思います。
イギリスの大学で最も重要とされるのは選択の自由と責任、そして計画性
 先生たちは「授業に来なさい」とは一度も言いませんでした。「君たちは色々な選択ができる。授業に来たくなければ来なくてもいい。ただ。自分の行動に対する責任は自分で取って下さい」と学期の始めに言われました。つまり先生たちは、生徒に選択の自由を与え、生徒自身の判断に委ねているという訳です。授業に出なくても誰にも怒られません。ただ、授業に出たり出なかったりで良い成績を取れるほどイギリスの大学は甘くはないです。当たり前のことですが、「高い出席率が良い成績につながる」ということです。何ごとにも責任を持って行動することが大切です。

1学期は週14時間しか授業がありませんでした。イギリスの大学は土日が休みなので、1日平均たった2.8時間でした(もちろん予備コースなので、学部に比べると少ないと思いますが)。これだけ聞くとすごく楽なように感じるかもしれないですが、実際はとても忙しいです。授業のない時間は全てコースワークの作業に当てられます。どのコースワークも一朝一夕でできるようなものではないので、しっかり計画を立ててコツコツやることが大切です。特にプレゼンテーションのようなコースワークでは、どれだけ練習したかで大きく差が出ます。僕もプレゼンテーションの前は、友達と一緒に何回も練習しました。

学生数が多い大きな大学になると、コースワークをやるためのパソコンが見つからないということがしばしば起こります。もしお金に余裕があるなら、留学前にノートパソコンを買って持っていくことをお勧めします。寮でもMicrosoft WordExcelを使ってコースワークができて便利です。

留学しようと思っている人の中には、「外国人と友達になりたいから、もしくは英語力を伸ばしたいから、留学先では日本人の友達はいらない」と思っている人もいるかもしれません。でも、日本人の友達を作ることも留学生活にはとても大切です。僕の大学には日本人の交換留学生がたくさんいました。留学する学生の英語力はかなり高いと思いますが、完璧ではありません。なので、病気になったときや何か困ったときなどに日本語で相談できる友達がいるととても心強いです。
僕の体験したイギリスの寮生活
 イギリスの寮はフラットの中でそれぞれの個室が与えられて、キッチン・トイレ・シャワーは共同というのが主流です。トイレとシャワーが部屋の中についている寮もありますが、その場合少し寮代が高いですね。トイレ・シャワーの共用というのは特に問題なかったですが、キッチンの共用がなかなか厄介でした。キッチンには冷蔵庫と冷凍庫がそれぞれ1台ずつありました。僕のフラットには、僕と日本人の生徒1人、そしてイギリス人の生徒3人で住んでいたのですが、イギリス人の生徒は一般的に料理をしないらしく、彼ら3人は冷凍食品ばかり買い込んで食べていました。なので、僕が使える冷凍庫のスペースはちょっとだけでした。
留学生活にとって最も必要なものとは…
 幸い、僕はかからなかったのですが、女の子の友達は結構ホームシックになっていました。極端な話、もし本当に辛ければ、日本にちょっとだけ帰るというのも悪くないと思います。もしくは家族の方に来てもらうとか。ホームシックになると留学生活が楽しめないと思うので、何とか乗り越えるように努力をした方が良いと思います。

個人的には留学で1番必要なのは英語力より環境適応能力だと思います。留学を楽しもうとする姿勢、自分が住むことを選んだ街を好きになろうとする努力、与えられた現実を受け入れる許容力などです。僕の周りにも1年間ずっと大学やリヴァプールへの不満をこぼしていた人がいましたが、見ていてちょっとかわいそうでした。

残念ながら留学するということは素晴らしいことばかりではありません。嫌なことがあったとき「もうイヤ!」と思うか、「これも留学の一部」と思えるかによって、留学生活が楽しいものになるか決まってしまうでしょう。僕は「留学する方が日本の大学に行くより素晴らしい」とは思わないし、どこにもそんな根拠はありません。どっちが良いとかではなく、どちらが自分に合っているかが大切だと思います。個人的には「留学」という未知の選択肢を選んで良かったと思っています。1人暮らしをすることで、自分の足りないところ・弱いところなどがはっきり分かるようになったり、日本各地に友達ができたり、とても充実した1年でした。そして何より色々な国の人と友達になれたことは1番の収穫です。
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